黒澤 明とリアリティー

黒澤 明という世界的な映画監督で脚本家がいました。ギリギリまでリアリティー(現実味)を追求する映画監督で何かと逸話の多い人です。

芥川龍之介の「藪の中」を映画化した『羅生門』を撮る時には高さ20メートルに及ぶ大きな門を実際に大映京都撮影所に建てたり、映画では映らない瓦に「延暦十七年」と時代を彫って4000枚も焼いたそうです。

『八月のラプソディー』という映画では、「合図とともにアリを一列に歩かせろ」という黒澤監督の要求があったのだそうです。そのために連れて来られたのが、アリの研究者として有名な山岡亮平先生。私と原田豊先生は山岡先生に直接話を伺ったのですが、山岡先生の協力もあって、なんと黒澤監督の「スタート」という声で、アリが一斉に一列に歩きはじめたそうです。

シェークスピアの「マクベス」を映画化した『蜘蛛巣城』のクライマックスで俳優の三船敏郎が全身に矢を浴びてハリネズミのようになるシーンがあります。この撮影では、筒の形をした矢をワイヤに通して三船敏郎に射かけるというものだったそうです。射かけられる三船敏郎にしたら危険な撮影です。

『デルス・ウザーラ』という映画では、虎を使う場面がありました。映画で使う虎はサーカスから借りたものだったのですが、黒澤監督の「小さすぎる」というダメ出しで、大きな虎が用意されます。次に連れて来られたのは大きいけどサーカスの虎でした。またまた黒澤監督の「目が死んでいる。」から駄目だという指示で、「野生のトラでないとダメだ」との要求をソ連側が受け入れて、シベリアで野生のトラを捕獲しましたが、痩せていたので、太らせて映画に使ったそうです。

今日で東日本大震災から8年経過しました。亡くなった方が1万5,896人、重軽傷者は6,157人、警察に届出があった行方不明者は2,536人とあまりの被害に呆然とします。今もこの被害に苦しむ方たちがいることを再認識したいです。リアリティーを持って共感して復興を祈りたいと思います。