卒業生インタビュー

あなたは今どのようなお仕事(生活)をされていますか。

医師・病院経営・医療研究者

高校時代とはどういう研究をされましたか。

採択直後の熱気ある時期だった。原田先生とともにアリの研究を始めた。ラムサール条約に指定された藺牟田池をはじめ各地で、アリのサンプリングをしたりして、実証的な研究を進めていた。3 年 10 月には、インドの国際学会(パンジャビ大学)で、その後の人生にも影響を与える大きな刺激を受け た。受験の大事な時期だったけれど、二度と経験できないことだったので、それを選んだ。

研究活動の上で、最も印象深かったことは何ですか。

世界の研究者と英語という共通言語で、研究成果についてディスカッションするという経験は、身体全体からわくわくするものがあった。多くの国際学会には行ったが、それを超える経験は未だ嘗て ない。私は医師として、アメリカの国際免許も取得したが、その原体験がなければ、世界を目指さそ うとはしなかった。

そこで学んだことはどういうことだと考えますか。

丁寧・緻密にデータを集めて、またたくさんのデータを丁寧・緻密に考察するという、いわば「科学の営み」を繰り返し経験したことで、「よく見せよう」という安易な考えは払拭された。先生から も、「知ったかぶりではいけない」と「地道さや細かさが大切だ」と薫陶を受けた。今でも、医師と してのスタンスは、知らないことは知らないという姿勢を貫いている。

SSHの学びにより、科学的な感性や好奇心、思考力は伸びたと思われますか。

科学的な視野や刺激は、今もフレッシュに残っていて、実は医学ではなく理学を志そうとも考えた。ただ、医師を志しつつ、科学もしていこうと決めた。自分がこれまで臨床と研究を一緒にやろうと努 力できたのは、高校時代のこの基礎研究がある。SSH の学びは、そういう意味で自分の生き方や人生 の選択を変えたと考えている。

例えば遠心機をまわすことですら、他の高校生よりも先んじるような優越感でわくわくしていた。 そうした好奇心の高い高校生が集まる大会は、他の高校生が自分では考えられない視点で研究を進め ていて、大変刺激的で、そして切磋琢磨していた。当時、全国大会で競った県外の高校生とは、今で も付き合いが続いている。科学を介在したこうした同世代との出会いも、お互いの科学的な感覚を鋭 くしてくれたと思っている。

プレゼンテーションやわかりやすく話す力や表現力は付いたと思いますか。

県大会、九州大会、全国大会、国際大会という一通りの発表をして、抑揚やアクセント等の伝え方 が身についた。当然論理的・科学的な考え方はその時に身についたものである。医学部では、あまり 基礎研究とそれを踏まえたプレゼンはやらないので、高校時代に身についた表現力は、その後の自分を支えてくれたと考えている。臨床の現場にいて、患者への伝え方にも役立っている。

高校時代が普通の教科学習だけで終わったとしたら,どう違ったと思いますか。

また、もし SSH の学びが私たちの後輩たちから始まったとしたら、強烈な羨望が沸いていたと思う。

そして、それができないことで、ひねくれていたかもしれない。教科学習だけであったら、前に述べ た知的刺激は得られず、高校時代は中途半端なものになったと思う。

SSH の学びは、あなたの理系選択に影響しましたか。また、研究したことで学習意欲は高くなったと思いますか。

まず、医学部に入るためのモチベーションは、高校時代のアリの研究で得ていたので、それがないと、合格に向けて頑張っていたかもおぼつかない。とにかく、当時は大学で研究と臨床を一緒にやろ うと燃えていた。今も、医師として学ぶ姿勢があるとすれば、そこから来ている。

現在どのような生活を送っていますか。研究(仕事)はどんな様子ですか。今の自分に役立っているところはどんなところと考えますか。

科学的な考え方や手続き、表現力は、今の仕事を支えてくれている。

後一つ、患者さんの心を開くことは私たちにとっても大切な仕事だが、患者さんには刺さることば、例えば「私は昔はアリの研究もしていたんです」と言うこと。そうすると、自分がどんな人間かを考えてくれて、患者さんがぐっと親しみを持ってくれる。

私は、その時ただの医者ではなくなる。いろんな国の医師に出会うときも、その経験をいうと、サイエンス的なアクティビティの雰囲気が高まり、 一気に距離が近くになる。そういうところにも役立っている。

今後の池田高校のSSHについてどう考えますか。期待することなどを教えてください。

今の日本に元気がなく、周囲の東南アジアの方が活気があるという気がする。日本は深刻な少子化の中にあるが、その数少ない子どもたちに科学の面白さを味わわせて、課題を科学によって克服する 能力を身に付けてもらいたい。

私には 5 歳の子どももいるが、東京にいると、幼いころから誰もが受 検一辺倒で知識の詰め込みを鼓舞される。知識習得は当たり前であるが、もっと柔軟な発想を育てないと、次世代は大変なことになると思う。

東京の SSH 校も多いけれども、子どもを行かせたいとそうそう思わない。池田の校風があって、その上で SSH の学びがあればこそ、素晴らしい教育ができた。同窓生とそういう話になる。生徒も教師 も、もっと頑張ってほしい。私にできることがあれば、いつでもお手伝いしたい。


あなたは今どのようなお仕事(生活)をされていますか。

2023年度より、○○研究所にて正社員として勤めています。臨床検査室に所属し、医薬品開発受託事業に携わっています。

高校時代とはどういう研究をされましたか。

物理班に所属し、シラスを用いた防音壁の研究を行っていました。

研究活動の上で、最も印象深かったことは何ですか。

 鹿児島大学に訪問し、プレゼン講習を受けたことです。鹿児島大学理学部物理学研究室の先生方三名に自分たちの研究発表を見ていただき、多くの質問とご指摘を受けました。最初は、それまで人前で発表する経験がほとんどなかったうえに、鋭い指摘を専門家の先生から受け、落ち込みました。しかし、落ち込む時間も無いほど質問が矢継ぎ早に来たため、「研究内容についてもっと深く学ばなければ」と反省し、火が付きました。

そこで学んだことはどういうことだと考えますか。

 質問で上手く答えられず、「失敗した」と思う要因は、知識不足もあるのですが、「相手の話の意図をつかめていないこと」なのだということです。相手の質問の意図を正確に汲まなければ、いくら知識があろうと質問には答えられません。話を聞くことの大切さを体感したと思っています。

SSHの学びにより、科学的な感性や好奇心、思考力は伸びたと思われますか。

 伸びたと思います。小中学校の自由研究以外研究をしたことが無かったので、研究という行為自体がとても楽しく、刺激的でした。また、仮説→実験→分析→考察という研究の流れを踏むことにより、論理的な思考力が身についたと思います。

プレゼンテーションやわかりやすく話す力や表現力は付いたと思いますか。

  付いたと思います。人前で発表をする機会を得られて、場慣れをすることが出来ました。また、資料を作る力も身につけることが出来ました。私自身が理学部に進学したことも大きいですが、研究や発表という体験が、大学での学びに直結していたと思います。

高校時代とはどういう研究をされましたか。

 付いたと思います。人前で発表をする機会を得られて、場慣れをすることが出来ました。また、資料を作る力も身につけることが出来ました。私自身が理学部に進学したことも大きいですが、研究や発表という体験が、大学での学びに直結していたと思います。

高校時代が普通の教科学習だけで終わったとしたら,どう違ったと思いますか。

 SSHでの研究や発表という経験が、大学での研究活動で多いに活かされたので、SSHでの活動があるのと無いのでは、その後の学びが大きく違ったと思います。

SSHの学びは、あなたの理系選択に影響しましたか。
また、研究したことで学習意欲は高くなったと思いますか。

 もともと理系を志望していたので、進路選択に直接的な影響はありませんでした。しかし、研究内容への学習意欲は確実に高まりました。また、他の研究発表を聞くことで、その分野への興味関心が高まりました。とくに原田豊先生が担当されていた生物班②のアリについての研究には大いに興味を持ちました。その後の進路選択が鹿児島大学理学部生命科学科生物学研究室でしたので、少なからず影響していたのかもしれません。

現在どのような生活を送っていますか。研究(仕事)はどんな様子ですか。
今の自分に役立っているところはどんなところと考えますか。

 現在は株式会社新日本科学の臨床検査室で、製薬会社から創薬のための非臨床試験(臨床試験の前段階)を受託しています。非臨床試験で採取された動物たちの尿検査を担当しています。また、事務仕事も担当しています。
大学院が修了し、進路を選択する際に、研究ができる環境に進みたいと考えました。そのつながりでこの仕事をしています。研究の楽しさを教えてくれたのはSSHでの活動でしたので、そういう意味で私の基盤になっていると思います。

今後の池田高校のSSHについてどう考えますか。
期待することなどを教えてください。

 以前、池田中学・高等学校が主催するグローバルサイエンティストアワードの審査員をさせていただきました。その経験から、学生ならではの着眼点を活かした研究をしていって欲しいと思います。大学や社会人は、自分で研究内容やテーマを選べないことが多いです。ぜひ学生ならではの着眼点で、自由に研究を行っていってほしいと思います。


あなたは今どのようなお仕事(生活)をされていますか。

食品関連企業の研究者

高校時代とはどういう研究をされましたか。

薩摩琵琶の音色の特徴(余韻について、西洋楽器との音の違いなど)に関する研究

研究活動の上で、最も印象深かったことは何ですか。

研究内容を九州大会で発表したこと。自分たちの研究の発表だけでなく、他の学校の研究発表を聞くことができたのも刺激になり、今後の研究により一層励もうと思えた。また、発表会に付随し て近くにある大学などの施設に研修に行けたことも良い経験になった。

そこで学んだことはどういうことだと考えますか。

実験・研究を通して、身の回りにあることに対して興味を持つこと、疑問に思ったことを解決することを学んだ。

SSHの学びにより、科学的な感性や好奇心、思考力は伸びたと思われますか。

伸びたと思う。普段何気なく見過ごしていた事象に関しても、SSH での経験から色んな視点で着目すること、考察すること、問題を解決する機会が増えた。

プレゼンテーションやわかりやすく話す力や表現力は付いたと思いますか。

伸びたと思う。SSH が無ければ、高校時代に人前で発表する経験が無いまま過ごしていたと思う。

研究職に勤めていると、人前での説明や研究発表などは切っても切り離せない。SSH のときの経験 が、今に繋がっていることは間違いない。

高校時代が普通の教科学習だけで終わったとしたら,どう違ったと思いますか。

疑問に思うこと、何かに興味をもつことが圧倒的に少なかったと思う。また、設問 6 と少し被るが、発表経験が無いまま大学進学・就職したときの対応力は大きく変わってきたと思う。

SSH の学びは、あなたの理系選択に影響しましたか。また、研究したことで学習意欲は高くなったと思いますか。

もともと理系科目が好きだったこともあったので SSH が理系選択に影響したかといえば私の場合そうではないかもしれないが、視野は確実に広がった。SSH での研究があったからこそ広い分野で の研究に興味を持ち、大学進学の方向性が定まった。学習意欲は高まったのだと思う。

現在どのような生活を送っていますか。研究(仕事)はどんな様子ですか。今の自分に役立っているところはどんなところと考えますか。

現在、食品素材の開発研究を行っている。研究を行っていると、全く知らない分野のことに対面することがある。そういった場合の学習力、情報収集力、問題解決力、共有力などの基礎的な部分 は SSH での学びがとても役立っている。

今後の池田高校のSSHについてどう考えますか。期待することなどを教えてください。

ぜひ今後も長く SSH を続けていただき、色んなことに興味を持てる学生を育ててほしい。プレゼ ン能力などは SSH 特有で得られる能力だと思う。大学でも社会人でも、今後に必ず役立ってくる能力を培っていってほしい。